簿記1級は、経理や財務のスキルアップを目指す人にとって魅力的な資格ですが、実際に取得する価値はどれほどあるのでしょうか?
「難易度が高い」「独占業務がない」といった意見も聞かれる中、果たして本当に「食いっぱぐれない」資格なのか、気になるところです。
簿記1級が、
- どのような場面で役立ち
- どんなメリットをもたらすのか
現役の経理マンが実体験を交えながら詳しく解説していきます!
簿記1級は意味がない?
独占業務がない
簿記1級には独占業務がないため、資格を取得しただけでは他の資格と比べて特定の業務が独占的に行えるわけではありません。
たとえば、公認会計士や税理士は、それぞれの資格を持っている人しかできない業務(独占業務)がありますが、簿記1級にはそうした法的な独占権が存在しません。
そのため、簿記1級の資格は、取得しただけではすぐに収入やキャリアアップに直結するとは限りません。
コスパが悪い
簿記1級の取得は、費用対効果の面で疑問視されることがあります。
まず、合格率約10%と試験の難易度が非常に高いため、合格までには長期間の勉強が必要です。
多くの受験者が数百時間の学習を費やし、さらに専門のスクールに通うことも少なくありません。
また、実際の業務でどれほど活かせるかは、勤務する職場によって異なります。
このように簿記1級は、取得に要するコストに見合ったメリットを享受できるかが不透明なのです。
中小JTCにおいてはオーバースペック
簿記1級は、中小企業の実務においてオーバースペックであることが多いです。
中小JTCでは、実際に必要とされるのは簿記2級までの知識が主流で、1級で学ぶ会計理論の知識を日常業務で活かす場面は少ないでしょう。
例えば、子会社が存在しない場合、簿記1級で学ぶ連結決算の知識は不要です。
また、簿記1級を持っていても、企業規模が小さい場合にはそれに見合った収入が期待できないことが多いです。
そのため、中小JTCにおいて、時間や労力をかけて1級を取得するメリットは、大手企業に比べてあまりないといえるでしょう。
簿記1級を活かすには?
大手上場企業の経理
簿記1級を取得していることは、大手上場企業で特に有効です。
これらの企業では、グループに様々な業態の企業が存在しています。
また複雑な組織再編も一定頻度で発生し、簿記1級で学習する管理会計を含む高度な会計知識が役立ちます。
また、大手上場企業は、コンプライアンスや内部統制に厳しく、正確な会計処理や報告が不可欠です。
簿記1級の資格を持っていることで、こうした企業の高度な会計ニーズに対応できる人材として活躍の機会は多いです。
簿記1級は食いっぱぐれない理由
給与水準が高い
簿記1級を取得していると、給与水準が高くなる傾向があります。
なぜなら、簿記1級取得者を多数迎え入れる大手企業経理ポジションの求人の年収はそもそも高いからです。
企業規模が大きくなるにつれて、
- 中小企業(資本金2,000万円未満)→385万円
- 大手企業(資本金1億円以上10億円未満)→480万円
- 超大手企業(資本金10億円以上)→652万円
といったように、平均給与は上昇していきます。
参照元:国税庁_令和5年分民間給与実態統計調査
就職・転職に有利
簿記1級の取得は、就職や転職活動において非常に有利です。
特に経理や財務のポジションを目指す場合、1級の保有は高度な専門知識と実務スキルを持っている証拠となり、企業から高く評価されます。
簿記1級取得者を優遇する企業も多く、資格を持っていること自体が選考の通過率を上げる要因となります。
公認会計士や税理士への登竜門
簿記1級は、公認会計士や税理士を目指す人にとって、重要なステップとなる登竜門です。
公認会計士や税理士の資格試験では、高度な会計知識が問われるため、簿記1級で学ぶ内容がその基礎として大いに役立ちます。
1級を取得していると試験対策も効率的に進めることが可能です。
さらに、簿記1級で培った知識は、税理士試験の一部科目免除などにもつながるケースがあり、資格取得への近道となることも少なくありません。
結果として、簿記1級はこれらの専門資格を目指すうえで、第一歩として多くの受験者に支持されています。
まとめ
簿記1級は、その取得が容易ではない一方で、適切に活かすことで大きなキャリアアップや収入向上につながる資格です。
特に大手企業への転職を考えている方には強力な武器となるでしょう。
また、公認会計士や税理士を目指す人にとっても、その基礎となる重要なステップです。
簿記1級の知識と経験を最大限に活かし、今後のキャリア形成に役立ててみてください。
挑戦する価値が十分にある資格と言えるでしょう!