経理の連結決算はつらい?現役経理マンがリアルな連結決算を解説します!

連結決算は、複数の子会社を持つ企業にとって欠かせない業務ですが、初めて取り組む経理担当者にとっては非常に大変な作業です。

しかし、経験を積むことで業務は定型化し、スムーズに進められるようになります。本記事では、連結決算の実務経験を行った視点から、連結決算の実務や具体的な手順、またその辛さとやりがいについて詳しく解説します。

経理以外も身近になった連結決算

連結決算とは

連結決算とは、親会社とその子会社を1つの経済単位として取り扱い、グループ全体の財政状態や経営成績を総合的に示す決算の方法です。

通常の個別決算では各企業単独の状況しか把握できません。

一方で、連結決算を行うことにより、グループ全体の売上や利益を正確に把握することが可能となります。

連結決算によって、投資家や取引先が企業グループ全体をより正確に評価することができます。

上場企業や大手企業はグループ会社も多く、連結決算を行っていることが多いです。

日商簿記2級の試験範囲追加

2017年から日商簿記2級の試験範囲に「連結会計」が新たに追加されました。

それまで簿記2級は、個別企業の財務諸表作成が学習範囲である試験でした。

簿記2級は、年間数万人が受験する試験で、会計や税務を本職としない多くの人が受験しています。

ちなみに、連結決算は、重要な子会社のない中小企業の経理ですと、扱わない場合があります。

それを差し引いても、近年、企業グループ全体の経営実態を把握するための連結会計が重要視されるようになったことが背景があると思われます。

この試験範囲変更で、受験者は、

  • 投資と資本の相殺
  • のれんの償却
  • 未実現利益の消去

といった、従来の個別決算に加え、連結財務諸表作成にあたっての基本的な知識が求められるようになりました。

経理実務における連結決算の具体的な手順

連結パッケージの収集

連結決算において、まず重要となるのが各子会社からの「連結パッケージ」の収集です。

連結パッケージとは、各子会社が親会社に提出する財務データや報告書のことを指し、これを基に親会社は連結財務諸表を作成します。

連結パッケージには、各子会社の財務諸表だけでなく、

  • 債権債務消去
  • 損益取引消去
  • 未実現利益の消去

といった情報が含まれています。

海外子会社がある場合、現地通貨は親会社の日本円に換算します。

財務諸表の合算

親会社と各子会社の財務諸表を単純合算します。

子会社数が少ない会社ですと連結パッケージの収集はメールを行っている場合もあります。

一方、財務諸表を合算するタイミングで多くの会社が連結会計システムを使用します。

連結決算システムは、

  • DIVA
  • STRAVIS

が有名ですが、他にもマネーフォワードもシステムを提供しているようです。

連結修正仕訳

単純に足し算するだけでは連結財務諸表とはなりません。

企業集団の実態を正しく表せていないからです。

そのため、

  • 投資と資本の相殺消去
  • 当期純損益の按分
  • のれんの償却
  • 内部取引の相殺消去
  • 貸倒引当金の調整
  • 未実現損益の消去

といった連結修正仕訳を起票します。

連結財務諸表の作成

こうして、

  • 連結貸借対照表
  • 連結損益及び包括利益計算書
  • 連結株主資本等計算書
  • 連結キャッシュフロー計算書

を作成します。

連結決算のやりがい

決算発表

上場企業の決算発表は、企業が業績を発表する一大イベントです。

株主や投資家やステークホルダーに対して、売上高や利益、資産負債等の状況が詳細に報告されます。

発表内容は、株価に大きな影響を与えます。

世間からの関心が高く、主要ニュースで取り上げられる企業の経理の場合、ワクワクドキドキすることもあるでしょう。

市場価値の高い経験

連結決算の経験は、経理の中でも市場価値の高いスキルです。

個別の財務諸表の作成とは異なり、複数の子会社や関連会社を多数展開する企業においてのみ生じる業務です。

複雑なグループ内取引や異なる会計基準の理解、子会社との効果的なコミュニケーション等、高度な知識とスキルが要求されます。

そのため、連結決算の実務経験者は、日系大手企業でのキャリアにおいて高く評価されます。

例えば、関係会社数百社レベルの連結決算は数人で分担して行うと思いますが、新卒未経験がいきなり希望して担当できることはあまりないと思います。

私の印象ですが、スケールが大きすぎて、中途であっても監査経験がある公認会計士や同様の経験がある経理以外担当できる気がしません。。

連結決算経験は、転職市場でも有利に働き、市場価値の高い経理人材としてキャリアを伸ばしていくことが可能です。

連結決算の辛い点

海外子会社とのリアルタイムのやり取り

海外子会社とのコミュニケーションは、連結決算を行う際に非常に重要です。

異なる言語や文化に加え、時差によるやり取りのずれがあります。

そんな中、正確かつスムーズに情報共有が必要です。

子会社に連結パッケージの細かい内容の確認をするとしても、もらったメールだけではわけがわからないことも多いです。

そんな時、電話、チャットやオンライン会議で速やかに解消したいところで、時差が少ない東アジアや東南アジアの場合、それほど苦労はしません。

一方、子会社が北米や南米にある場合は、12時間ほど時差があります。

ただでさえ多忙の中、日本時間の深夜や早朝に対応が必要となり、非常に辛い思いをすることが多いです。。

慣れてくるとワンパターン

連結決算の業務は、最初は難しいと感じることが多いです。

しかし、しばらくすると他の経理の業務と同様に定型業務であることに気づくでしょう。

仕事が単調で退屈に感じることさえもあるでしょう。

四半期に一度連結決算を行っている会社であれば、まだ刺激があっていいかもしれません。

月次で連結決算を行っている会社の場合は、悲惨ですよ。。

結局、

  • 各子会社からの連結パッケージの収集
  • 財務諸表の合算
  • 修正仕訳の作成

といった一連の作業は流れを掴むとスムーズに進めていくことができます。

連結決算の業務が難しいと思う理由は多くの場合最初で、

  • 知らないシステム
  • 知らない関係会社や担当者とのコミュニケーション

が原因であることが多いです。

まとめ

本記事では、連結決算の基本から実務まで詳しく解説しました。

連結決算は初めての人にとっては大変ですが、慣れてくると定型化されていきます。

連結決算をマスターすれば、経理としての市場価値を高め、キャリアを飛躍させるチャンスがあります!

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